海外に住む 自分の国を離れて

前回のコラムで、祖国でない日本で育ったことによって、私がいかにTCK(a Third Culture Kid 、3つの文化を持つ子供)となり、そのことで私が受けた恩恵についてご説明しました。世界規模で国際化が進み、このように祖国以外で育つTCKが増えている中、当のTCK達は生まれた国と、育った国とに対して好き嫌いを聞かれたら、きっと答えるのに困るだろうな、と思ったりします。私にとっては日本も英国も、言ってみれば歯磨きをするような、日常生活の中にあるのです。これまでのキャリアの中で、私は何度が自分と日本とを切り離して、全く違った方向を試みたりしましたが、どうもうまく行きませんでした。一つには日本というのは、私の心を捉えて放さない国であるということ、そして結局は私の日本での経験や知識が職業上の価値となり、今日の収入にもつながっているからなのです。

一つ興味深いのは、TCKでなく、祖国で生まれ育った人が、なぜあえて祖国を離れて海外への移住を希望するのか、ということです。私が両親と元々日本に住んだのは幼少期の5年間でした。そして私が18歳になった時、また日本に戻る事になりました。広島、そして東京と、結局通算して20年日本に住む事になったのです。ちなみに、もし読者の皆さんが私の母に、“どうしてまたイギリスを離れることにしたのですか?”と聞いたら、母は多分冗談交じりに“英国の鉄道とさよならしたかったからよ。”と答えると思います。というのも、その当時の国鉄サービスは、今よりももっとアテにならない状況だったのです。毎日ロンドンへの通勤を余儀なくされていた母はその当時、重要な職務についており様々な会議の中心でした。だから交通事情で到着が遅れると、会議が中止ということが多々あったのです。結局母は体調を崩したのですが、それに輪をかけたのが日々の通勤ストレスだったのです。

勿論日本といえば、万事うまく運ぶ国で電車は定刻に走り、人々は時間厳守し、任せて安心かつ礼儀正しい国です。多くの外国人にとってはこれが魅力となって日本を移住先とするので、祖国に戻って大ショックを受けたりします。物事は思うように運ばない、人々は礼儀知らず、おまけに街はごみだらけ。実際、長いこと祖国を離れていると、いざ自分の国に戻っても、自分こそが外国人のように感じてしまうのです。英国に戻った私は、今でも自分の両親が外国人に見えてしまいます。彼らはいつもきちんとした身なりをしているんですもの!

私の知る限り海外に長く暮らす日本人は、もはや自分が日本に属していないように感じていると思います。そういう人がよりによって、ひどい接客サービス、当てにならない天候や鉄道を持つ英国を滞在先に選ぶということが凄い驚きです。以前私の日本人の知人が、イギリスの自由さとか、寛容さが居心地いいと言っていました。ただ、これはイギリスだけに言えることではないと私は思います。誰しも海外に住むと、自分の祖国で求められる一定の基準とか文化的な束縛から解放され、翼を広げられるような気持ちになるのは当然の事だと思うのです。冗談かと読者は思われるでしょうが、日本に住む外国人もそう感じているのですよ。

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このシリーズは人材紹介会社のセンターピープルのご協力の上提供させて頂いております。

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