真のグローバル本社が日本企業のグローバル化

以前の記事で、ファーストリテイリングや楽天などの日本企業が英語を社内公用語にしたことについて触れました。これに対する反応として、日本人社員の英語に対する態度を調査した様々な結果がメディアで取り沙汰され、なかには日本人の73%が社内公用語として英語を話すことは好まないという結果もありました。

さらに、最近発表された産業能率大学による調査では、ビジネスピープルの67%が海外で働きたくないと思っていることが報告されました。これらの調査結果を受けて、日本の評論家の多くは、グローバル化する世界に対して日本が消極的になりつつある全体的なトレンドを映し出していると結論しています。特に若い世代が内向きかつ慎重になっていて、これが経済にマイナスの影響を及ぼすという懸念があり、これは日本政府も指摘しています。これらの反応を見て私が感じるのは、日本人が自分たちに関する調査結果を苦悶するのがどれだけ好きかを示しているということです。特に、日本が他の国とは異なるという結果や、何らかの暗い見通しを示す結果が出ると、高々と警鐘が鳴らされます。

私の目には、この種のトレンドは、日本社会の特異性などではなく、むしろ経済要因に関係しているように見えます。戦後の数十年のように輸出主導で日本経済を立て直そうといった切迫した気運はありません。終身雇用が徐々に廃れつつあるのを受けて、若い人たちの会社に対する忠誠心は薄れ、ゆえに会社が行けというならどこへでも行くという態度も希薄になりつつあります。

日本企業は過去20年以上にわたって、グローバル環境の変化に対応してきました。高くつく先進国への海外駐在員は減らして、現地採用の管理職者を登用し、その代わり資本と人材の投資を新興国へと向けるようになりました。

同じトレンドは、他の先進経済圏にも見られます。米国はかつて労働者の移動が盛んな国でした。仕事を求めて他州へ引っ越すことを厭わない人たちがたくさんいたのです。しかし明らかに、その傾向は薄れつつあり、失業率の問題が長引いているにもかかわらず、人口の流動性は下降気味です。一方、ヨーロッパの人は、アメリカ人のパスポート取得率がわずか20%であることを何かと指摘したがりますが(イギリスでは70%です)、欧州内の移民の流れはほとんどが東欧からであって、西欧からでないことは特筆に値します。

多くの日本企業は、消極的な日本人社員を海外に赴任させたり、英語を社内公用語にしたりするのではなく、アジアでの採用者を日本に転勤させ、また日本に留学中のアジアからの学生を雇用するなどして、グローバル化を進めようとしています。おそらくこれらの社員に対しては、できるだけ日本社会に同化して、本社の日本人社員に大きな影響を及ぼさないことが期待されているのでしょう。

とすれば、アジア以外の事業がますます日本およびアジアから切り離され、この2つの地域間で人の移動が起きることはほとんどなくなる可能性があります。急進的かもしれませんが、それならば解決策は、日本人社員の大多数が日本国内市場に目を向けたいと思っている事実を受け入れてしまい、グローバル本社から日本国内事業を切り離してしまうことかもしれません。このグローバル本社は世界のどこに置いても構いません。そしてもちろん、そこでの公用語はおそらく英語になるでしょう。

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